歯科衛生士と歯科助手の違いは?資格・業務範囲・給与をわかりやすく解説

歯科衛生士 歯科助手 違い

歯科衛生士と歯科助手は、どちらも歯科医療に欠かせない職種ですが、その役割には大きな違いがあります。

この記事では、「資格」「業務範囲」「給与・年収」といった具体的な違いから、「どちらの仕事が自分に向いているか」までを徹底比較します。

国家資格を持つ専門職である歯科衛生士と、未経験からでも挑戦できる歯科助手。それぞれの特徴を詳しく解説し、あなたのキャリア選択をサポートします。

資格で見る|歯科衛生士と歯科助手の違い

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歯科医療現場で活躍する歯科衛生士と歯科助手は、どちらも重要な役割を担っていますが、最も大きな違いは国家資格の有無にあります。

ここでは、それぞれの資格の違いについて解説します。

歯科衛生士:国家資格保有者

歯科衛生士は、歯科衛生士法に基づく国家資格を必要とする専門職です。

この資格を取得するためには、高校卒業後に文部科学大臣の指定を受けた歯科衛生士学校や都道府県知事指定の歯科衛生士養成所で、3年以上の専門教育を受ける必要があります。

カリキュラムは93単位2,570時間以上と定められており、そのうち臨床実習が20単位900時間含まれています。

養成機関での学習を修了した後、年1回実施される歯科衛生士国家試験の合格が必要です。

試験の合格率は例年90%以上と高く、2025年の第34回試験では91.0%の合格率を記録しました。(参考:一般財団法人 歯科医療振興財団

合格後は一般財団法人歯科医療振興財団が歯科衛生士名簿に登録し、歯科衛生士免許証が交付されます。この免許は、一度取得すると更新なく一生有効です。

歯科助手:資格不要

歯科助手は、基本的に資格を必要としない職種です。

歯科助手には公的な資格制度はありませんが、日本歯科医師会認定の歯科助手資格認定制度や歯科医療事務管理士など、さまざまな民間資格が存在します。

これらの資格は必須ではありませんが、取得することで専門知識の証明となり、就職活動で有利になったり資格手当が支給されたりする場合があります。

民間資格の取得期間は数ヶ月から1年程度で、法的な教育内容の定めはありません。

歯科衛生士の業務範囲

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歯科衛生士の3大業務である、「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」は、それぞれ異なる専門性を持ち、口腔健康を総合的にサポートする重要な役割を担っています。

ここでは、それぞれの詳しい業務内容について解説します。

歯科予防処置

歯科予防処置は、歯科衛生士だけに認められた専門的な医療行為で、虫歯と歯周病を予防するための直接的な処置を行います。

人が歯を失う原因の90%が虫歯と歯周病であるため、これらを予防できれば自分の歯を保つことができます。

歯科助手には認められていない業務のため、国家資格を持つ歯科衛生士の専門性が求められる重要な業務です。

具体的な処置内容は以下の通りです。

  • 歯垢や歯石の除去(スケーリング・ルートプレーニング)
  • フッ化物塗布による虫歯予防
  • 歯面清掃(PMTC)による汚れの除去

歯科予防処置では専用の器具を使用し、患者さんの口腔内に直接手を入れて処置を行います。

歯肉縁下の見えない部分も含めて丁寧に処置するため、歯の解剖学的な知識と高度な技術が必要です。

定期的な予防処置により、患者さんが生涯にわたって健康な歯を維持できるよう支援しています。

歯科診療補助

歯科診療補助は、歯科医師を中心としたチーム医療において、診療をスムーズに進めるためのサポート業務です。

1955年に歯科衛生士業務に加えられた重要な業務で、歯科医師の指示の下で治療の一部を担当し、患者さんの診療にあたります。

本来、診療補助は保健師助産師看護師法により看護師にのみ認められた業務ですが、歯科衛生士は特別に歯科診療に限り補助業務を行えます。

具体的な業務内容は以下の通りです。

  • 診療器具や薬品の準備と管理
  • 歯科医師への器具の手渡しや治療のアシスト
  • 口腔内バキュームによる唾液や血液の吸引

歯科診療補助では、術式の流れや治療の注意点、疾患に関する十分な知識が必要です。

また、歯科医師と患者さんのコミュニケーションに配慮し、信頼関係に基づく心優しい歯科医療を実現するための重要な役割も担っています。

効率的な診療を支えるとともに、患者さんの不安を和らげる配慮も求められる専門性の高い業務です。

歯科保健指導

歯科保健指導は、患者さん一人ひとりの状況に合わせた口腔ケアの方法や生活習慣の改善を指導する業務です。

虫歯や歯周病は生活習慣病であるため、治療よりも予防が重要で、患者さん自身が正しい生活習慣を身につけるための専門的な支援が求められます。

歯科保健指導により患者さんの歯科に対する意識が向上し、継続的な健康維持につながります。主な指導内容は以下の通りです。

  • ブラッシング指導と歯磨き方法の改善
  • 栄養指導や食生活の改善アドバイス
  • 年齢や体調に応じた口腔ケア方法の指導

指導対象は幅広く、小さな子どもから高齢者まで、さまざまな年齢層やライフスタイルに対応する必要があります。

近年は高齢化により、摂食・嚥下機能訓練も新たな分野として注目されており、歯科衛生士の活躍の場はさらに広がっています。

歯科医院だけでなく、保育園や学校、介護施設などでも重要な役割を担っています。

歯科助手の業務範囲

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歯科助手は、特別な資格を必要とせずに歯科医療現場で働ける職種ですが、業務範囲には法的な制限があります。

業務内容は主に「受付・事務業務」と「診療サポート業務」の2つあり、どちらも歯科医院の円滑な運営において欠かせない重要な役割です。

ここでは、それぞれの詳しい業務内容について解説します。

受付・事務業務

歯科助手の受付・事務業務は、歯科医院の顔として患者さん対応を担う重要な役割です。

患者さんが来院した際の最初の印象を左右するため、笑顔で迎え入れる丁寧な接客スキルが求められます。

歯科治療に不安を抱える患者さんも多いため、心を和らげるコミュニケーション能力も必要です。主な業務内容は以下の通りです。

  • 診察券や保険証の確認・受け取り
  • 問診票の記入依頼や初診の患者さんへの対応
  • 電話での予約受付や問い合わせ対応
  • 診療後の会計業務と領収書発行
  • 予約管理とスケジュール調整

歯科医院によってはレセプト作成業務も担当しますが、専門知識が必要なため有資格者が行うケースも多いです。

受付業務は歯科医院の収入に直結する重要な業務であるため、正確性と迅速な対応が求められます。

患者さんとの信頼関係構築にも大きく影響する、歯科医院運営の中核となる業務です。

診療サポート業務

歯科助手の診療サポート業務は、歯科医師や歯科衛生士が円滑に治療を進めるための重要なアシスタント業務です。

患者さんの口腔内に触れる医療行為は法的に禁止されているため、医療行為以外の範囲でのサポートに限定されます。

治療の流れを理解し、適切なタイミングでサポートする専門性が求められます。具体的な業務内容は以下の通りです。

  • 治療器具の準備と歯科医師への受け渡し
  • 診療用チェアやユニットの清拭・消毒
  • 使用済み器具の洗浄・滅菌・保管
  • 患者さんのエプロン装着や診療室への案内
  • バキュームによる口腔内の水分吸引

院内感染防止のための器具管理は特に重要で、洗浄から滅菌まで2時間以上かけて徹底的に行う歯科医院もあります。

歯の型取りに使用する印象材や、セメントの練和作業も歯科助手が担当できる業務です。

患者さんと歯科医師の間に立ち、治療への不安を和らげる配慮も求められる、専門性の高いサポート業務となります。

歯科助手の業務制限

歯科助手は歯科医療行為を行うことができず、以下の業務が法的に禁止されています。

  • レントゲン撮影
  • 麻酔注射
  • 歯の切削や抜歯
  • 詰め物や被せ物の装着
  • 印象採得(歯型取り)
  • 歯石除去やフッ素塗布

歯科助手の主な業務は、受付・事務業務、診療器具の準備や清掃、患者さんの案内などの医療行為以外の業務に限定されます。

過去には、歯科助手による違法行為が摘発され、刑事処分を受けた事例もあるため注意しましょう。

給与・年収で見る|歯科衛生士と歯科助手の違い

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歯科衛生士と歯科助手は、どちらも歯科医療現場を支える大切な職種ですが、給与や年収面で大きな違いがあります。

ここでは、それぞれの年収の目安や収入に影響する要素、成長機会について詳しく解説します。

歯科衛生士:平均年収405万円の安定収入

厚生労働省によると、歯科衛生士の平均年収は、2025年時点で全国平均約405万円です。一般的な女性の平均年収よりやや高めで、安定した収入が期待できる職種です。

年齢や経験、勤務先によって年収は異なりますが、都市部や大規模クリニックでは給与が高くなる傾向があり、経験を積むことで年収アップも見込めます。

歯科衛生士は国家資格が必要な専門職のため、就職先が多く、転職市場での需要が高い点も特徴です。

歯科助手:平均年収322万円でも成長機会あり

厚生労働省によると、歯科助手の平均年収は、2025年時点で約322万円です。歯科衛生士より約80万円低い水準ですが、無資格で始められるため成長機会に恵まれた職種です。

都市部や規模の大きい歯科医院では給与水準が高くなる傾向がありますが、地方や小規模医院では低くなる場合もあります。

歯科助手は特別な資格がなくても就職できるため、働きながらスキルを磨くことでキャリアアップが可能です。

歯科助手資格認定制度やトリートメントコーディネーター(TC)資格を取得すると、より責任のある業務やマネジメント職に就ける場合もあります。

歯科衛生士と歯科助手、どちらが自分に向いている?

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歯科衛生士と歯科助手のどちらが自分に向いているかを考える際は、仕事内容や資格、求められる適性などを比較することが大切です。

下記の表は、両職種の主な特徴や条件をまとめたものです。

項目歯科衛生士歯科助手
資格国家資格必須資格不要
主な仕事内容・歯科予防処置
・歯科診療補助
・歯科保健指導
・受付/事務
・診療サポート
求められる能力・専門知識
・手先の器用さ
・コミュニケーション力
・気配り
・臨機応変な対応力
・チームワーク力
勉強・資格取得の難易度高い(3年以上の専門教育+国家試験合格)低い(無資格で就職可能、民間資格取得は任意)
キャリアの安定性高い中程度
向いている人の特徴・専門職志向
・安定志向
・学び続ける意欲がある人
・サポート役が得意
・立ち仕事や動き回ることに抵抗がない

歯科衛生士は国家資格が必要な専門職で、患者さんの口腔健康を守るための高い専門性や責任感が求められます。安定したキャリアや専門性を重視したい方におすすめです。

一方、歯科助手は資格がなくても始められ、受付や診療サポートなど幅広い業務を担当します。

人を支えることやチームワークが得意な方、立ち仕事や動き回ることに抵抗がない方に向いています。

それぞれの特徴を比較し、自分の性格や将来像に合った職種を選びましょう。

まとめ

歯科衛生士は国家資格を持ち、予防処置や保健指導、診療補助など専門性の高い業務を担う医療従事者です。

一方、歯科助手は資格がなくても働くことができ、受付や診療サポートなど医院運営を支える重要な役割を担います。

資格や業務範囲、給与面などに明確な違いがあるため、自分の適性やキャリア志向に合わせて選択することが大切です。

スガノ歯科クリニックは、地域に根ざしたホームドクターとして、女性スタッフによるきめ細やかな対応で安心して通える環境を整えています。

歯周病専門医による指導のもと、アシスタント業務や見学を通じて歯周病治療の知識を深められます。

空き時間にはホワイトニングやデンタルエステの練習、勉強会の費用も医院が負担するなど、学びを応援する職場です。

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